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株式会社エイト日本技術開発
学校配布とイベント展示に繋がった、評価された防災漫画
株式会社エイト日本技術開発は、主に公共事業をサポートする建設コンサルタント会社として、道路・交通、河川・港湾、都市・環境・建築、耐震・防災など、幅広い分野で調査、計画、設計、維持管理などに携わっています。防災対策は、耐震・防災分野に焦点を当て、自然災害に強いインフラ整備や都市計画を行い、災害に強い都市や地域づくりを目指しています。今回は、水害に対する防災への備えを自分事化してもらうことを目的で漫画を依頼しました。
漫画を活用しようとしたきっかけ、お持ちの課題
寺脇さん:漫画制作を依頼しようとしたきっかけは、大きく分けて2つあります。
一つ目は、平成29年度からの新学習指導要領において防災に関する内容が充実したことを踏まえ、国土交通省と文部科学省が中心となって防災教育を支援しております。しかし、近年の豪雨災害を受けても、逃げ遅れによる犠牲者が発生している状況のため、日本の文化の一つである漫画を使うことで、災害への意識を持ってもらえるのではないかと考えたからです。
日本は、災害が起きても行政が助けてくれるという「公助」の認識で戦後約80年過ごしてきたため、「逃げない」「準備をしない」人が多くなり、自分の命は自分で守るという意識が低いと感じております。
また、国土交通省では『防災教育ポータルサイト』が公表され、わかりやすく動画で情報発信はなされているものの、情報の受け取り方に地域差があり、まだ全国的なムーブメントには至っていないように感じております。
私は、日本に住む人全員が、防災を「自分事化」し、防災の知識を当たり前に持っている環境でないと、今後の災害に対応できないと感じています。動画やゲーム、メタバースなどのデジタルコンテンツもありますが、浸透するのが難しい状況です。
そんな時に東京防災に掲載された首都直下型地震の漫画を読んで、漫画は災害を伝えるのに適していると感じました。
二つ目は、トルコ大地震が発生してから半年たったころに、日本の建築家が防災意識を高めるために4ページの漫画を作成・配布した事例を見たことです。動画は見逃されがちですが、絵と文字でコンパクトに伝えられる漫画ならその心配が少なく、漫画の有効性を感じました。
私はこれまでの約30年間防災を難しく考えずに、当たりまえの知識として持っておくには、どのような方法があるのか考えていたところ、東京防災の漫画や海外での漫画事例が後押しとなり、今回漫画制作を依頼するに至りました。
制作した防災漫画について
寺脇さん:私たちが持つ防災に関する技術的な知見を、各家庭に知識・知恵として届けたいという思いから制作しました。特に今回は、学校教育を通じて子供たちに防災知識が自然と根付くよう、主人公を子供に設定しました。
フーモア:だから主人公が小学生なのですね。
寺脇さん:はい。一般的な防災漫画は笑っている表情で解説するものが多い中、この漫画では驚き、悲しみ、苦しみといった喜怒哀楽の表情も細かく描かれています。防災の備えや振り返りも含めて、漫画のクオリティが高く感じられました。
シナリオも素晴らしかったです。私の方で第一原稿をフーモアさんに渡し、フーモアさんが必要な情報をトリアージしてくれました。情報を詰め込みすぎると内容が散らばりがちなので、1コマ1コマのコマ割からセリフの構成も整えてくださり、ラフの段階でほとんど完成形に近いものになっていました。
作品のテーマであるマイ・タイムラインに関する漫画はいくつかありますが、この漫画は自分のなかではナンバー1です。ページ数も5枚とコンパクトでありながら起承転結がしっかりしており、ちょうど良い仕上がりです。
防災漫画の活用方法と効果
フーモア:制作した漫画の活用方法について教えてください。
寺脇さん:地域の防災イベントでこの漫画全部をA1パネルに印刷して展示しました。その際、小学2年生のお子さんから80歳のおばあちゃんまで、この漫画を読んで「自分でも内容がわかった。漫画っていいね」という感想をいただくことができました。
漫画の可能性を私たちも理解できたし、希望が持てました。その場にいた行政の防災担当者もこの漫画を評価してくださり、別の日のイベントでも同じ内容で展示することになりました。
学校教育で役立つ防災漫画のこだわり
防災教育は3~4年生から始める地域もあるため、この漫画の漢字にはふりがなをふっています。ふりがながあれば難しい漢字を覚えることもできますからね。
フーモア:漫画が漢字の教材にもなりますね。
寺脇さん:学校の先生と話し合い、防災に関する言葉を漢字かひらがなにするか議論しましたが、「難しい漢字も覚えてもらい、日常でその単語を見たときに理解できるようになってほしい」という想いから、漢字表記にしています。
フーモア:ひらがなだけだと、漢字そのものに目が行かないこともありますからね。
寺脇さん:そうなんです。ミスリードにならないよう、漢字表記に統一しました。知っておくべき漢字や読みを漫画を通して学んでもらえます。
フーモア:漫画から防災の知識や単語を取り入れることで、日常生活にリンクさせることができるのですね。
寺脇さん:ニュースや公園の看板にある防災のキーワードに、漫画で得た知識を通じて日常生活でも気づけるよう工夫しました。
この漫画が地方の教育委員会の目に留まり、学校教育で使っていただけることになりました。今後、教員の方にアンケートを取って効果を図っていく予定です。その中で今後、漫画化してほしいテーマも聞いていけたらと思います。
今後作ってみたい防災漫画
フーモア:今回は水害がテーマでしたが、次に取り組みたいテーマはありますか?
寺脇さん:地震や避難所、備蓄、ハザードマップの読み方、防災マップの使い方など、まだ作りたい漫画はたくさんあります。
防災の知識は天気を含めて、旅行やキャンプなど、普段の生活にも活用できます。防災知識の9割は日常的に使い、1割は防災、自分の命を守る知識として身に着けてほしいですね。
フーモア:漫画を通じて日常に役立つ防災知識を学び、いざという時に活かせる人が増えるといいですね。
防災漫画の社内評価、感想
寺脇さん:社内の評価も上々でした。この漫画は各種イベントでも活用しており、今後は自社の広報・営業ツールとしても発信していこうと考えています。今後も第二弾、第三弾と防災をテーマにした作品を制作していきたいと思っており、まずはそのスタート地点に立てたという手応えがあります。この漫画が当社の防災をアピールするキックオフになったと感じています。
これまではある地域の成果としての防災コンテンツを制作してきましたが、当社のキャッチフレーズである『価値ある環境を未来に』のもと、社会貢献の一環として防災を住民に届ける商品としても提供できる考えています。ただ、漫画の制作は私たちだけでは難しいため、今後もフーモアさんと一緒に作り上げていきたいと思っています。
漫画には、技術的な専門用語を行政だけでなく住民の皆さんにもわかりやすく伝える「翻訳する力」があります。この漫画を通して、防災の重要性が全国民に浸透していくことを期待しています。
フーモア:今回はインタビューにご協力いただきありがとうございました!
会社名 | 株式会社エイト日本技術開発 |
URL | https://www.ejec.ej-hds.co.jp/ |