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一コマ漫画とは?描き方や代表例、特徴や使いどころなどを解説!

一コマ漫画とは?描き方や代表例、特徴や使いどころなどを解説!

一コマ漫画とは、1枚の絵の中にストーリーやオチ、メッセージを凝縮して表現する漫画の形式です。新聞や雑誌では風刺画として、広告ではワンカット表現として活用されることが多く、近年ではSNSが最も多く一コマ漫画が投稿される場となっています。短い中にもユーモアや社会風刺、皮肉などを込められるのが最大の魅力であり、見る人に瞬時に印象や感情を伝えられる点が特徴です。

この記事では、一コマ漫画の定義や特徴、代表的な作家・作品、そしてイラストとの違いについてわかりやすく解説します。

一コマ漫画とは?

一コマ漫画とは、1つの絵(コマ)だけで物語やオチが完結する漫画のことを指します。登場人物のセリフや状況描写を最小限に抑えながら、ひと目で笑いや皮肉、社会的メッセージを伝える構成になっているのが特徴です。短い形式ながらも、見る人の想像力を刺激したり、社会問題を風刺したりと、深い表現力を持つジャンルとして知られています。
「たった1コマで漫画と呼べるのか?」と疑問を持つ人もいますが、1コマであっても漫画の定義(*1)(絵と文字で物語や感情を伝える表現)を十分に満たしており、立派な漫画作品といえます。

(*1)漫画の定義(Wikipediaより引用)

  • 視覚情報を絵として提示する(文章による説明ではない)。
  • 絵は話の展開を動的に描写し、情報の本質部分を占める(挿絵とは異なる)。
  • 聴覚情報は人物のセリフは文字として、音が擬音として表現される。ただし、音楽は擬音ではなく絵やコマの行間のようなもので表現される場合が多い。
  • コマフキダシなど独特の形式を持っている。

一コマ漫画の描き方

一コマ漫画を描くうえで最も大切なのは、「テーマをひとつに絞ること」です。
限られた一枚の中で複数の要素を盛り込みすぎると、焦点がぼやけて伝えたいことが分かりにくくなってしまいます。
伝える内容を一つに絞り、そのテーマを最も効果的に表現できる構図やセリフ、表情を選ぶことで、シンプルながらも印象に残る一コマ漫画に仕上がります。

1:テーマとオチを決める

一コマ漫画を描くうえで最も大切なのは、テーマとオチを明確にすることです。
テーマは「何を伝えたいか」、オチは「どんな結末で印象を残したいか」を示します。笑い・風刺・共感・皮肉など、目的を最初に定めておくことで構成のブレを防げます。

例として、

  • テーマ:会議オチ:「…で、何の会議でしたっけ?」
  • テーマ:ダイエット オチ:「明日から頑張るって言って、もう100日目」

また、登場させるキャラクターや小道具(例:ダイエットをしたい30歳男性、食べ物、カレンダー、テレビなど)を具体的に決めておくと、構図が作りやすくなります。

2:構図を考える

登場人物の配置や背景、セリフの位置を整理し、ひと目で状況がわかる構図を意識しましょう。
読者の視線の流れを考え、重要な要素は中央または目線の動線上に配置すると効果的です。
セリフやオチが自然に目に入る構成を意識することで、短い一コマでも理解しやすく印象に残る絵になります。

3:セリフ・吹き出しを最小限に

一コマ漫画は「見て理解できる」ことが大切です。
セリフが多いとテンポが悪くなり、絵の印象が弱まります。できるだけ絵で説明する構成を意識しましょう。
どうしても言葉が必要な場合は、一言でオチがつくような短いセリフにまとめると効果的です。
吹き出しの形や配置も工夫し、視線を妨げないように設計します。

4:空白を恐れない

背景を描き込みすぎると主題が埋もれてしまいます。
一コマ漫画では、余白(空白)も重要なデザイン要素です。
余白は「間」や「余韻」を生み出し、読者に考える時間を与えます。
シンプルな構図の方がメッセージが際立ち、印象にも残りやすい傾向があります。
視線が自然に主題へ向かうよう、背景と空白のバランスを意識して仕上げましょう。

このように章ごとに整理することで、初心者にも実践しやすく、かつプロの制作手順としても通用する内容になります。

一コマ漫画を描くときの注意点

一コマ漫画を描くときに最も意識すべきことは、「たった1コマしかない」という制約の中で、どれだけ伝えられるかという点です。
一コマで表現できる情報量には限界があり、その不足分を読者の想像や感性が補うことになります。つまり、一コマ漫画は「描かれていない部分」まで含めて楽しませる表現形式だと言えます。

小説や長編漫画のように、豊富な情報でキャラクターや背景を説明することはできません。
そのため、読者によって解釈が異なるという特徴を持ちます。
しかし、この「解釈の余地」こそが一コマ漫画の最大の魅力でもあります。
見る人によって意味が変わる――その“あいまいさ”を上手く活かすことで、深みや余韻のある作品に仕上げることができます。

また、制作時には以下の点にも注意しましょう。

  • 説明しすぎない:セリフや注釈は最小限に。情報を詰め込みすぎるとテンポが悪くなり、伝わりづらくなります。
  • ネタを詰め込みすぎない:テーマとオチはひとつに絞る。要素を増やしすぎると焦点がぼやけ、一コマの強みが失われます。
  • 誤解を生まない表現に配慮する:風刺や皮肉を扱う場合は、特定の個人・団体を揶揄しないよう注意が必要です。情報量が少ないぶん、誤読のリスクを常に想定しましょう。
  • 読後感を大切にする:笑い・驚き・共感など、読み終えた後に心に残る感情を意識すると印象的な作品になります。

一コマ漫画は「短さ」という制約がある一方で、余白や想像力を武器にできる奥深い表現です。
描きすぎず、伝えすぎず、「ちょうどよい余韻」を残すことが、読者の心を動かす鍵になります。

一コマ漫画の代表例

一コマ漫画は、日本でも多くの著名な作家たちによって描かれ、ユーモアや社会風刺の文化として発展してきました。
物語漫画の原点として、また時事を鋭く切り取る表現として、各作家がそれぞれのスタイルで一コマの世界を確立しています。

手塚治虫

『ブラック・ジャック』や『鉄腕アトム』など長編漫画の巨匠として知られていますが、実はキャリア初期には新聞や雑誌向けの一コマ漫画も多数制作していました。
鋭い皮肉と人間観察を込めた作風が特徴で、当時から「短くても伝わる力」を持っていたことがわかります。
代表的な一コマ漫画:「あなた 超能力の幼児開発はもうやめましょうよ」(出典:漫画昭和史 : 漫画集団の50年

星新一

小説家として知られますが、彼のショートショート的な発想は、一コマ漫画にも通じる「短くても深いオチ」が特徴です。
一コマ漫画の代表例:長年収集したアメリカの一コマ漫画をエッセイ化して「進化した猿たち」にまとめています。

代表的な一コマ漫画:「進化した猿たち―The Best―

やくみつる

現代日本を代表する風刺漫画家の一人。政治・経済・スポーツなど、社会の出来事をユーモアと皮肉を交えて表現するスタイルで知られています。
新聞や雑誌の一コマ欄で発表される作品は、日々のニュースをタイムリーに切り取る“時事の一コマ”として人気があります。

代表的な一コマ漫画:朝日新聞掲載(平成22年8月7日(土))

一コマ漫画の特徴

一コマ漫画の最大の特徴は、「短い中に物語性と余韻を詰め込む」点にあります。
言葉やコマ数で説明するのではなく、たった1枚の絵で世界を成立させる力が求められます。

1枚の絵で物語やオチを伝える

一コマ漫画は、セリフや説明が少なくても読者に状況を理解させる構成になっています。登場人物の表情やしぐさ、背景のわずかな描写から「今、何が起きているのか」を直感的に伝えるのが特徴です。
文字よりも絵で語る表現力が、作品の印象を大きく左右します。

風刺・皮肉・ユーモアを重視

一コマ漫画の定番は、社会問題や時事ネタをユーモラスに切り取るスタイルです。
政治や経済、日常の矛盾などを題材に、皮肉や笑いを交えて描くことで、「笑えるのに考えさせられる」作品が多く生まれています。
短い形式ながらも、社会批評やメッセージ性を持たせやすいのがこのジャンルの強みです。

想像の余地がある

一コマ漫画では、すべてを描き切らずに**「読者の想像に委ねる」**構成が効果的です。
絵の外にあるストーリーを想起させることで、作品に深みや余韻が生まれます。
「この後どうなるのか」「何が起こったのか」と考えさせる余白こそが、一コマ漫画の芸術的な魅力と言えるでしょう。

一コマ漫画の使いどころ

一コマ漫画は、シンプルでメッセージ性が高いため、さまざまなシーンで活用されています。

風刺画・時事ネタ新聞やニュースサイトなどで社会問題を皮肉っぽく表現
広告・PR商品やサービスの特徴を「一瞬で伝える」ツールとして
挿絵・コラム文章の補足やユーモアを加える役割
SNS投稿短時間で読者の興味を引くコンテンツとして人気

一コマ漫画とイラストの違い

一コマ漫画とイラストは一見よく似ていますが、目的と構成の本質がまったく異なります。

イラストは、主に「見た目の美しさ」や「情景描写」を目的として描かれるものです。
構図や色彩、タッチなどのビジュアル要素に重点が置かれ、鑑賞者に「美しい」「印象的」と感じさせることが目的です。広告や書籍の表紙、記事の挿絵など、視覚的な補助や装飾として機能する場合が多く、見せる絵といえます。

一方で一コマ漫画は、必ず物語性・オチ・メッセージのいずれかを内包しています。
キャラクターの表情やセリフ、状況設定などを通して「何かを伝える」構成になっており、たとえ静止画であっても“ドラマ”が存在します。

つまり、

  • イラストは「視覚的に魅せる絵
  • 一コマ漫画は「物語を伝える絵

という明確な違いがあります。
同じ1枚の絵でも、描く意図が「見せたい」か「伝えたい」かによって、作品の構成・表情・背景の情報量までも変わってくるのです。

FAQ

Q

一コマ漫画とは

A

1つの絵で物語やオチを伝える漫画形式。セリフや描写は最小限でも、笑いや風刺、メッセージを伝える力を持ちます。絵と文字で感情を描くという漫画の定義を十分に満たす、立派な表現ジャンルです。

Q

一コマ漫画の使いどころは?

A

一瞬で伝える力がある一コマ漫画は、風刺画・広告・挿絵・SNS投稿など幅広く活用されています。社会問題の皮肉から、商品の魅力紹介、記事の補足、読者の目を引く投稿まで、多様な場面で効果を発揮します。

Q

一コマ漫画とイラストの違いは?

A

イラストは「視覚的に魅せる絵」、一コマ漫画は「物語やメッセージを伝える絵」です。同じ1枚でも、見せたいのか伝えたいのかで構成や情報量が大きく異なります。目的次第で描き方も変わります。